
(写真上)平成21年度観艦式に参加した「くまたか」
※日本のミサイル艇開発
1967年にエジプト海軍のソ連製ミサイル艇がイスラエル海軍の駆逐艦「エイラート」を撃沈した事件は世界に衝撃を与えた。 これを契機に先進国はミサイル艇と対艦ミサイルの開発に本腰を入れることになるが日本でも4次防原案でミサイル艇の整備が 盛り込まれていた。しかし、限られた予算は対潜用の護衛艦や潜水艦、哨戒機に優先充当されミサイル艇建造は日の目を見なかった。 1970年代から80年代にかけて諸外国では多数のミサイル艇が建造され特に中小国では海軍力の主役の地位を占めるまでに 勢力を伸ばしていく。だが、ソ連海軍の潜水艦戦力に対抗する対潜部隊の整備が最優先された海上自衛隊では航洋性に乏しい小型の 哨戒艦艇は小世帯という状況が長く続きミサイル艇は実現される事はなかった。
海上自衛隊でようやくミサイル艇開発が具体化したのは平成に入ってからの事である。
幾つか案の中からイタリア海軍が地中海での作戦行動を前提に建造した全没水型水中翼艇(ハイドロフォイル)の「スパルヴィエロ」
をタイプシップとした小型ミサイル艇を建造する事になった。これがミサイル艇「1号」型である。この二つのハイドロフォイル艇は
敵水上艦船への攻撃に特化した性格であり哨戒を主任務とし多目的な運用を前提とする諸外国の標準的なミサイル艇の中にあってはかなり
特異な存在であった。
「スパルヴィエロ」級は極めて
独創的な兵器であったが問題点も多数存在していた。ハイドロフォイルは航空機並の高度な支援体制が必要であり兵器としての実用面から
も評価は芳しいものではなかった。また、地中海の穏やかな海と異なり日本近海の厳しい気象・海象条件もハイドロフォイルの運用に
は大きな困難となった。これらの要因から「1号」型の建造は3隻で打ち切りとなり第二世代の新ミサイル艇の模索が始まった。
新しいミサイル艇は凌派性の向上に重きがおかれ排水量では「1号」型の4倍に大型化し船型は魚雷艇11号型で実績があるディーブ
V系の滑走型が採用された。船質は高速艇では標準的なアルミ合金製である。新ミサイル艇は平成11年度計画で1,2号艇が予算化
されたが予算承認後の平成11年(1999年)3月に発生した北朝鮮工作船による「能登半島沖不審船事件」の影響から能力を
向上させる事になり建造費用が増額された経緯がある。
新ミサイル艇はステルス性も極めて重視されており自衛艦として初めて本格的なレーダー断面積RCS計算を設計に取り入れた。76mm
速射砲の砲盾も直線デザインのステルス型で海自で初の導入である。新ミサイル艇のネームシップは「はやぶさ」と命名されクラスで
6隻建造された。
(写真左)ネームシップの「はやぶさ」
舞鶴基地北吸桟橋で撮影。マスト付近に見えるレドームはスーパーバードB衛星通信装置。
艦橋構造物と煙突の中間には6.3m型複合艇が搭載されている。
(写真左)「はやぶさ」型は自衛艦として初めてRCSを設計に取り入れた。艇尾にはウォーター・ジェット推進器を防護するガードレールが
装着されている。
※主機/推進器関係
諸外国のミサイル艇は哨戒任務を主任務とするものが多く巡航性や航続距離を重視して主機にディーゼル・エンジンを採用する 傾向が強い。一方、「はやぶさ」型は高速性能を重視しており燃費では劣るガスタービンを搭載している。世界的に見れば少数派 であるが航続距離を若干犠牲にしても対水上打撃力の発揮を最優先にした運用方針と言えよう。なお、「はやぶさ」型の搭載主機は GE製(石川島播磨重工でライセンス生産)のLM500−G07である。推進器はウォーター・ジェットを3基搭載している。
※兵装・電子戦装置
「はやぶさ」型が搭載する戦術情報処理装置はOYQ−8Bで他の主要電子戦・航法関係装置は以下の通り
射撃指揮装置FCS−2型31C
電波探知装置NOLR−9B
データ・リンク装置リンク11
対水上レーダーOPS−18−3
航海レーダーOPS−20
赤外線暗視装置OAX−2
6連装チャフ発射機SARBOC Mk36
「はやぶさ」型の主兵装である対艦ミサイルは国産開発の90式艦対艦誘導弾(SSM−1B)で陸自の88式地対艦誘導弾と同系列の ミサイルである。射程は100km以上、誘導方式は慣性誘導+アクティブ・レーダー・ホーミングで「はやぶさ」型は連装発射筒を 2基装備している。艦砲はOTOブレダ製をライセンス生産した62口径76mm速射砲。
(写真左)「はやぶさ」の62口径76mm単装速射砲
ステルス型砲盾を採用しており在来型とは大きく印象が異なる。艦橋上には射撃指揮装置FCS−2型31Cが装備されている。
(写真左)煙突後部にはガスタービン吸気口が見える。対艦ミサイルは国産開発の90式
| はやぶさ | PG−824 平成11年度計画 三菱重工下関造船所 平成14年3月25日竣工 |
|---|---|
| わかたか | PG−825 平成11年度計画 三菱重工下関造船所 平成14年3月25日竣工 |
| おおたか | PG−826 平成12年度計画 三菱重工下関造船所 平成15年3月24日竣工 |
| くまたか | PG−827 平成12年度計画 三菱重工下関造船所 平成15年3月24日竣工 |
| うみたか | PG−828 平成13年度計画 三菱重工下関造船所 平成16年3月24日竣工 |
| しらたか | PG−829 平成13年度計画 三菱重工下関造船所 平成16年3月24日竣工 |
基準排水量200t
満載排水量240t
全長50.1m
幅8.4m
深さ4.2m
喫水1.7m
船型:単胴細長型
主機/軸数:ガスタービン3基(搭載主機:LM500−G07)/3軸(ウォータージェット)
出力:16.200馬力
速力44ノット
兵装
・90式対艦ミサイル連装発射機2基
・76mm速射砲1基
(他に12.7mm機銃を2基)
乗員21名