地対空誘導弾ペトリオットPAC−3(能力改善V型)
PATRIOT PAC−3 ERINT

海自イージス艦と共に我が国ミサイル防衛MDの根幹を成す地対空ミサイル

現在、日本が進めているミサイル防衛(MD)の基本構想は第一段階(中間段階)として海上に配備されたイージス艦 (「スタンダート」SM−3ブロック1A搭載)が要撃を行い、第二段階(終末段階)としてイージス艦が撃ち洩らした弾道ミサイルを 空自のペトリオットPAC−3(能力改善3型)が要撃を行うというものである。

※PAC−2とは異なりERINTミサイルを採用したPAC−3
発射機などはペトリオットを流用しているがミサイル本体は全く異なる

1991年に起きた湾岸戦争でアメリカ軍はペトリオットPAC−2でイラク軍のスカッド・ミサイルの迎撃を行ったが本来航空機や巡航ミサイルの 迎撃を任務としているPAC−2では弾道ミサイルの迎撃には自ずから限界が生じていた。命中率は諸説あるが20〜40%程度であったらしい。 当時のメディア報道では高い命中率があったように報じられたが現実には満足するには程遠い数値だった。
アメリカ軍は湾岸戦争の戦訓を基に弾道ミサイルの迎撃を目標としたPAC−3の開発を開始した。当初はレイセオン社案のPAC−2方式の近接信管を搭載した タイプとロッキード・マーティン社案の射程延長型迎撃機ミサイルERINTをペトリオットのシステムに組み込んだタイプの2種が提案されたが ロッキード・マーティン案が採用された。

※射程延長型迎撃機ミサイル ERINT

ERINT(Extended Range Interceptor Missile)はペトリオットとは全く別に開発されていた弾道ミサイル迎撃用ミサイル であったが開発コストと時間を短縮するにはERINTをペトリオットのシステムに搭載するのが最善と判断された為である。
つまりPAC−3はペトリオットの名を名乗のり発射機や射撃管制装置などはペトリオットを流用しているが ミサイル本体はPAC−2で使用されるMIM−104とは全く別個のものだ。PAC−3は段階的に開発が進められ構成1,2,3と進化してきたが航空自衛隊が 導入したのは最新の構成3である。ERINTはPAC−2の近接信管とは異なり”ヒット・トゥ・キル”と呼ばれる直撃方式で敵弾道ミサイルの撃破を図る。 弾道ミサイル迎撃時の最大速度は4〜5マッハ程度と推測される。


PAC−3の各構成

(写真左/下)ミサイル・ランチャーM902
左は射撃形態、下は牽引形態。PACー2では4連装ランチャーの各コンテナ毎にミサイル1発が格納されランチャー計4発が搭載されていたがPACー3では ミサイル本体が小型化されたので各コンテナ毎に4発、ランチャー計16発のERINTミサイルが搭載されている。


(写真左)射撃管制装置ECS(AN/MSQ−132)

(写真下)電源車


(写真左/下)フェーズド・アレイ・レーダーRS(AN/MPQ−65)
(左)はレーダーを展開した形態、(下)は牽引形態


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(写真左/下)アンテナ・マスト・グループAMG
(左)がアンテナを展開した形態、(下)は格納形態。PAC−3の通信中枢装置である。


PAC−3は限定された要地防空用ミサイル

日本のMDでは敵弾道ミサイルが発射されてからの対応する時間的余裕の問題から準中距離弾道ミサイルMRBM(射程2.000km以下)に対する要撃を 想定していると言われている。PAC−3弾ERINTは航空機要撃用のPAC−2に比べ小型軽量化されているが射程もPAC−2の70kmから 20kmと短くなっており極めて限定された要地防空に徹した対空ミサイルだと言える。ただし、対航空機、対巡航ミサイル迎撃時ではもう少し長い距離で迎撃可能と 言われている。なお、アメリカではPAC−3の射程を50kmに延長した改良型の開発を進めている。
航空自衛隊ではPAC−3構成3が平成19年(2007年)3月30日より入間基地第1高射群第4高射隊に初配備された。6個高射群 全ての配備を目指している。


北朝鮮弾道ミサイル発射実験に対応した事例

空自のPAC−3は北朝鮮による弾道ミサイル発射実験に対応する為、弾道ミサイル破壊措置命令に基つき平成21年と平成24年の2回、実戦配備されている。

※平成21年の事例

平成21年(2009年)3月12日、北朝鮮が通信衛星ロケット「銀河2号」(実態は弾道ミサイル「テポドン2若しくはその改良型」)の打ち上げを予告した。 これに対応する為、防衛大臣は同3月27日に弾道ミサイル破壊措置命令と出し海自イージス艦と空自PAC−3部隊が配置に付いた。ミサイルの飛翔予定コースは 東北地方上空を通過するものでありPAC−3は東北及び首都圏の各基地等に展開した。北朝鮮ミサイルは同4月5日に発射されたが日本領域への直接の影響はなく 破壊措置命令は解除された。

※平成24年の事例

平成24年(2012年)3月16日、北朝鮮が通信衛星ロケット「銀河3号」(実態は弾道ミサイル「テポドン2若しくはその改良型)の打ち上げを予告した。前回平成 21年の発射では日本の東北地方上空を通過するコースであったが今回は沖縄方面上空を通過するコースとされた。同3月30日に防衛大臣は弾道ミサイル破壊措置 命令を出し海自イージス艦と空自PAC−3部隊が配置に付いた。PAC−3は沖縄本島、石垣島、宮古島、及び首都圏に展開した。北朝鮮ミサイルは4月13日に 発射されたが発射後1〜2分で爆発飛散し日本領域への直接の影響はなく破壊措置命令は解除された。


PAC−3弾要目
誘導方式 プリプログラム+指令+アクティブ
全長 5.2m
翼幅 0.48m
弾体直径 0.25m
弾体重量 315s
射高 15000m
最大速度 マッハ4〜5程度(推測)
射程 20km
燃料 固体1段

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