
(写真右)東北方面特科隊第130特科大隊の自走発射機M270
多連装ロケットシステムは広範囲に展開した敵部隊を一気に制圧する目的で平成4年度より調達が 開始された方面特科部隊の装備である。自走発射機はM270と呼ばれる。
※ワルシャワ条約軍戦車部隊を撃破する為に欧米が共同開発したMLRS
本来は冷戦時代にヨーロッパで強力な戦力を持っていた旧ワルシャワ条約機構軍の戦車部隊を撃破する目的でアメリカ、イギリス、 イタリア、西独、フランスが共同で開発した多連装地対地ロケットで一般にはMLRSの名で知れており、1983年に米軍で 配備が開始され今日ではNATO軍や日本、韓国、イスラエルなど多数の西側諸国で使用されている。搭載されるロケット弾は各種あるが最も標準的 なものは射程約32km、1発のロケット弾に644発のM77型子弾が内蔵されているクラスター弾タイプのM26型でランチャーに12発装填されている。M26は 一度の射撃(12発)で20kuの面目標を制圧出来る。MLRSは湾岸戦争やイラク戦争などで実戦に投入され絶大な戦果をあげ高い評価を得た。 一方で使用するクラスター弾が非人道的であると度々話題になっている。 また、最近では射程を約160kmに延長し子弾を950発内蔵する誘導型地対地ミサイルATACMS(エータクムス)も開発されている (装填数は2発)。なお、M26型とATACMSの混載は出来ないらしい。
※陸自MLRSの主な配備先
第1特科団
・第1特科群第129特科大隊、第133特科大隊
・第4特科群第131特科大隊
東北方面特科隊
・第130特科大隊
西部方面特科隊
・第132特科大隊
富士教導団
・特科教導隊
各特科大隊はM270×18両、装填機等で編成
陸上自衛隊では99両が導入された。車体・発射機は日産自動車宇宙航空事業部(現:IHIエアロスペース)でライセンス生産が行われたがM26型ロケット弾は 米軍からの有償軍事援助FMSによって供与された。75式自走130mm多連装ロケット弾発射機の後継とも言えるが兵器だが威力は桁違いに強力で戦力価値は 比較にならない。 これまで陸上自衛隊が運用して来たM270のロケット弾はM26型であるが、平成20年(2008年)5月に採択された軍縮条約「オスロ・プロセス」により 日本も装備している在来型クラスター弾を全て廃棄する事になった。 M26型も廃棄の対象になるが、陸上自衛隊では新たにGPS誘導される単一弾頭タイプのM31型を導入する事が決定されている。これにより陸自のMLRSは広範囲な 面制圧兵器から精密誘導兵器に大きく性格を変える事になる。
(写真左)富士学校で撮影した特科教導隊のM270
ランチャーに仰角をかけた状態。M270の車体はアメリカ陸軍の歩兵戦闘車M2を改造したものでM2と同じくアルミ装甲である。
前部のキャビンは装甲化され乗員3名が搭乗する。
(写真下)第133特科大隊のM270
(写真左)後部から見たM270
M270のロケット弾は6発搭載のランチャー・ボックスをそのままランチャーに装填する方式で短時間での再装填が
可能。陸自ではランチャー・ボックスの運搬には7tトラックをベースにした装填機を使用している。
(写真下)MLRS装填機
車両は7tトラック(短)を流用
※M26型ロケット弾
米軍からの有償軍事援助FMS
全長 約3.900mm
直径 約227mm
重量 約306s
最大射程 約32km
子弾数 644個
※M31型ロケット弾
GPS誘導
最大射程 約45km
単一弾頭
M270自走発射機
製作(ライセンス生産) 日産自動車宇宙航空事業部(現:IHIエアロスペース)
全備重量約25t
全長 7.06m
全幅 2.97m
全高 2.6m
エンジン 水冷4サイクルV8気筒ディーゼル
出力 500馬力
最大速度 64km/h
乗員 3名