(写真上)横須賀逸見岸壁に接岸中の「くにさき」
乾舷が高く堂々とした艦容である。本クラスは全通甲板を採用しているが艦首部は一段下がった鎖甲板になっている。
露天式であるが密閉式の「ひゅうが」型に比べると出入港作業は容易であろう。
「おおすみ」型は海上自衛隊初の空母型船型を有する輸送艦であるが実質的には限定的なヘリコプター運用能力を持ったドック型揚陸艦
と言える。
往来のLST型輸送艦が艦首にピーチング用のランプを持ち輸送艦自体が直接、海岸に乗り上げる揚陸方式であったのに対して
「おおすみ」型の揚陸方式はヘリコプターによる空輸とエアクッション型揚陸艇LCACによる揚陸の2本立てとなっており
往来型LSTでは実現出来なかった高度な3次元での揚陸任務が可能となっている。また、LST船型では望めない速力(22ノット)
や凌波性を有し遠洋能力も格段に向上している。自衛隊の海外派遣任務が常態化する時勢において近代的な大型輸送艦の整備は必至であり「おおすみ」型の
建造には大きな意義があったと評価出来る。本クラスはメディアでも大きく取り上げられており能力以上に過大評価された感もある。
しかしながら「おおすみ」型は以下の点から強襲揚陸艦、あるいは空母としての運用は極めて困難と言える。
@「おおすみ」型はヘリコプター運用能力が限定的である
「おおすみ」型は上甲板後部にCH−47級の大型ヘリを2機同時運用(1機が発着艦、1機が駐機)出来るスペースを有するが格納庫
(車両甲板)にCH−47級の大型ヘリを格納する事は出来ない。中型ヘリは格納庫内に格納出来るが(UH−60はローターを外す必要がある)
その分、車両等の搭載数は減少せざるを得ない。
また、ヘリの整備員も必要に応じての乗艦となり整備機材も固有装備化されていないなどヘリ整備能力にはかなり問題があるなど「おおすみ」型のヘリ運用能力は
限定的であり運用上の大きなネックとなる。
A揚陸作戦のための作戦指揮・情報処理能力が限定的
現代戦での揚陸作戦には陸海空の3次元一体となった高度な作戦指揮・情報処理能力が求められるが「おおすみ」型のCIC能力は
アメリカ海軍の強襲揚陸艦にはとても及ばずドック型揚陸艦の範疇を超えるものではない。
B飛行甲板強度などの点から空母としての運用は事実上不可能
飛行甲板強度(「ハリアー」などのV/STOL機のジェット排気に耐えられないとされている)やスキー・ジャンプ発艦装置が
装備されていない事、空母としては低速、CIC能力の問題などから空母として運用する事は事実上不可能である。
しかし、「おおすみ」型はピーチング揚陸主体であった第二次大戦型のLST型輸送艦とは桁違いの高度な揚陸方式と大きな輸送量を 持った輸送艦である事は間違いないところであり海上自衛隊の輸送能力向上に絶大な貢献を果たしている。今後の国際貢献任務にも 欠かせない存在である。
「おおすみ」型は十分にステルス性を意識した設計でありアイランドや船体にはテーパーがかけられている。マストもステルス設計になっている。
上甲板後部はヘリ甲板になっておりヘリ用マーキングが2ヶ所描かれているが前部が駐機用、後部が発着艦用である。上甲板前部は主として
車両スペースとして使用される。
第2、第3甲板は主として居住区画(陸自隊員330名搭乗可能)、第4甲板前部は車両甲板(90式戦車なら約10両、74式戦車なら約12両搭載可能)
となっている。艦首やや後方の両舷には車両搭載用の水密構造のランプが装備されており搭載車両はここから車両甲板内に進入する。
第4甲板後部はLCAC用のウエル・ドックとなっておりLCAC2隻を搭載出来る。LCACはウエル・ドック内への注水なしで
格納出来るが一般の舟艇搭載をも考慮してウエル・ドック内に注水させる事も可能。
「おおすみ」型は3隻建造され在来型輸送艦を更新して来た。いずれも第1輸送隊に配備されている。今後はヘリ整備能力の向上やLCAC乗員交代要員の 常時乗艦などが課題となろう。単なる”輸送艦”ではなくドック型揚陸艦としてより効率的な運用が期待される。
(写真左)艦首正面から見た「くにさき」
艦型に比べてアイランド構造物が大きい事がよく分かる。本クラスは全通甲板を採用しているがヘリコプターの運用が限界であり
V/STOL機の運用は極めて困難である事が実感出来る。”ミニ空母”などと表現しているメディアは本クラスの実態を全く理解出来ていない。

(写真上右)「おおすみ」のアイランド構造物
ステルス性を意識した設計で前後01甲板レベルに近接防御兵器20mmCIWSを装備。内部にはCIC室をはじめ司令室、医務室など艦の中枢が配置
されている。
(写真上左)「おおすみ」の右舷側艦後部付近
搭載艇は11m型作業艇、左舷側にも搭載されている。

(写真上右)旗甲板から見た上甲板前部
ここには主としてトラックなどの車両が搭載される。前部エレベーターは力量約20t。
(写真上左)アイランド構造物後端より見た上甲板後部
ここにはヘリコプター用マーキングが2機分記入されている。後部が発着用、前部は駐機専用である。手前に見える後部エレベーターは力量約15t。
(写真上左)上甲板から見たアイランド構造物後端付近
02甲板レベルに見える窓のある区域はヘリコプター発着管制室兼第1揚搭管制室。03甲板レベルには吊り上げ荷重約15tクレーンが装備されている。

(写真上右)「おおすみ」の艦橋内部
(写真上中)「おおすみ」の旗甲板
手前にチャフ・ランチャー、その後方には信号機掛けが見える
(写真上左)作業中の15tクレーン

(写真上右))右舷側車両搭載用の水密構造(観音扉式)のランプハッチ
艦首やや後方に設置されており左舷側にもある。90式戦車などの装甲車両、重装備もここから搬入する。
(写真上中)格納庫(車両甲板)内部から撮影した左舷側ランプ
(写真上左)LCAC格納庫から見た車両甲板
上部に見える窓のある区域はLCAC管制所。車両甲板は90式戦車なら約10両搭載出来る。
(写真左)「おおすみ」型は艦尾に下ヒンジ式のドック扉を装備している。
ウエル・ドックにはLCAC2隻が搭載出来る。
| おおすみ | LST−4001 平成5年度計画 三井玉野 平成10年3月11日竣工 |
|---|---|
| しもきた | LST−4002 平成10年度計画 三井玉野 平成14年3月12日竣工 |
| くにさき | LST−4003 平成11年度計画 日立舞鶴 平成15年2月26日竣工 |
基準排水量 8.900t
満載排水量 14.000t
全長 178.0m
幅 25.8m
深さ 17m
喫水 6.0m
主機/軸数 ディーゼル2基(搭載主機:三井16V42M−Aディーゼル)/2軸
出力 26.000馬力
兵装
・20mmCIWS2基
乗員 135名