
「ひゅうが」型は老朽化した「はるな」型を更新する目的で建造された空母型船型を持つ大型護衛艦である。
全通型甲板を持つなどヘリコプター運用能力は「はるな」型や「しらね」型などとは比較にならないほど向上している。空母保有など絶対に許されなかった
昭和40年代から50年代の日本では想像すら出来なかった艦艇でもあり自衛隊の活動範囲の拡大を象徴する存在である。
ただし、スキージャンプ発艦台は装備しておらず現状では「ひゅうが」型でのV/STOL機の運用計画は考慮されていないので
イギリス海軍の「インヴィンシブル」級やイタリア海軍の「カブール」に代表される軽空母のジャンルに属する艦ではない。
また、艦尾にウエル・ドックを有しLCACを運用出来る「おおすみ」型や韓国海軍の「独島」のような揚陸任務に特化した艦艇でもない。
指揮・通信、情報処理能力に優れ多数のヘリコプターを効率よく運用出来る大型対潜護衛艦、というべき性格の水上戦闘艦艇である。
今日では「ひゅうが」と同程度の大きさを持つ軽空母はV/STOL機を搭載しているのが常識でありヘリコプターのみの搭載を前提と
した空母型船型の艦艇は日本独自の運用思想に基ずいてる。反面、軽空母に求められる洋上打撃力や艦隊防空力には
大きな制約がある事も事実である。中国海軍の空母建造計画が具体化した現状で海自が将来においてもV/STOL機の導入を行わないの
かどうかは非常に注目される点である。
※海自長年の悲願であった事実上の対潜空母
ところで、海自では草創期より対潜ヘリを搭載した護衛空母の構想があったが政治的にも予算的にも次期早々として浮かんでは消えて 実現を見る事はなかった。その意味で言えば全通飛行甲板を備えた「ひゅうが」は諸外国の軽空母と性格を異にするものの海自長年の 悲願であった対潜ヘリ搭載護衛空母と評価する事は決して間違っていない。「ひゅうが」型は海自のみならず陸・空自、更には海上保安庁等 の各行政機関のヘリコプターの運用も念頭に置かれ新しい時代の統合作戦や災害派遣任務にも十分に対応出来る。
(写真左)「ひゅうが」の艦首
艦首部にはソナー・システムOQQ−21を構成するバウ・ソナーが装備されておりそれを防護する目的からアンカー用
のホーズホールは前方にかなり突き出している。
飛行甲板は左舷側に大きく張り出しており「ひゅうが」型は米海軍空母と同じく右舷接岸を原則とする。

(写真上)「ひゅうが」型は帝國海軍空母「大鳳」や現代の米海軍空母と同じエンクローズド・バウを採用。
鎖甲板は密閉されておりロープを繰り出す為の窓が設置されている。エンクローズド・バウは凌波性は優れているが出入港作業は一苦労しそうだ。
(写真左)内火艇収容スペースや短魚雷発射管にはシャッターが設けられている。

(写真上)左舷後方から見た「ひゅうが」
艦尾左舷側のスポンソンには近接防御兵器20mmCIWSが装備されている。艦尾に見える二つの円形は対魚雷デコイの
繰出し口。舷側が張り出した本艦の出港作業は曳船も気を使いそうである

(写真左)艦首上空から見た「ひゅうが」
「ひゅうが」型の飛行甲板には4箇所のヘリ発着スポットがマーキングされている。
ヘリ用リフトは前後に2基装備されている。前部リフトはSH−60系用だが後部はMC−101級大型ヘリにも適合した大きさに
なっている。格納庫内にはSH−60系の機体で最大11機程度を収納出来る。格納庫内の整備区画ではMC−101がローター
拡張状態での整備が可能となっている。全通飛行甲板をはじめ優れた整備能力など「ひゅうが」型のヘリコプター運用能力は「はるな」型
や「しらね」型と比べ格段に向上している。
ヘリコプター運用能力と並んで「ひゅうが」型の大きな特徴が指揮・通信、情報処理能力である。
「ひゅうが」に搭載される戦術情報処理装置は個艦の対空、対水上、対潜の各兵器システムを統合運用し、更に航空機や他の艦船から
データ・リンク装置によって得られた情報も効率よく処理する。また、通信衛星を利用して海上自衛隊の統合ネットワーク・システム
であるMOFと連結し高度なC4I能力を持つ。「ひゅうが」型は艦砲と個艦対艦ミサイルは搭載していない。本艦型の主要な兵装は
垂直ミサイル発射装置Mk41VLSから発射される発展型シー・スパロー対空ミサイルESSMと垂直発射型アスロックである。
発展型シー・スパローは射程約50kmと往来型を大きく上回る性能を持ちある程度の対水上能力を持つ。これを管制するのが国産
開発のFCS−3改(射撃指揮装置3型改)である。ソナー・システムはOQQ−21を装備。

(写真上左)左舷側から見たアイランド構造物
艦橋にはFCS−3改用のフェーズド・アレイ・レーダーの平面形アンテナが大小1基ずつセットで計4箇所に
設置されている。アンテナは大きいほうがCバンド対空・対水上捜索兼追尾用、小さいほうがXバンド・ミサイル・イルミネーター用。
アイランド構造物はテーパーがかけられマストは塔型を採用しステルス性が十分に意識された設計になっている。
(写真上右)右舷側から見たアイランド構造物
前後の甲板室とアイランドを含め長さ70m、幅9mある。本艦の頭脳である艦橋は03甲板レベルにある。
(写真左)アイランド後部03甲板レベルにある航空管制所
単なるヘリコプター発着指揮所ではない。飛行長や発着艦管制官がここで指揮を執る。

(写真上中)「ひゅうが」格納庫 SH−60系ヘリコプターを11機格納出来る。(写真上右)武器用リフト 2基装備される。

(写真上左)飛行甲板右舷前部付近に装備されている近接防御兵器20mmCIWS
「ひゅうが」型はCIWSを2基装備しているがいずれも対水上射撃能力を兼ね備えた新型のMk15ブロック1B。本クラスは
艦砲を有しておらずこの20mmCIWSが唯一の固定装備された火器である。
(写真上中)垂直ミサイル発射装置Mk41VLS
16セルで発展型シー・スパローESSM対空ミサイルと垂直発射型アスロックを装填。発展型シー・スパローは往来型の発展改良型
であるが多目標対処能力を持つなど大幅に性能が向上した新世代の対空ミサイルである。誘導方式は終末段階はセミ・アクティブ・レーダー
・ホーミング、中間段階は慣性誘導。
(写真上右)右舷側の3連装短魚雷発射管、左舷側にも装備されている。
(写真右)訓練用に搭載されているSH−60J用廃機
米海軍空母でも用廃機を訓練用に搭載しており「ひゅうが」型もこれに習ったものであろう。

(写真上左)艦載救難作業車P−25J
重量8.55t
全長4.75m
全幅1.78m
全高1.63m
(写真上右)3t牽引車
平成23年3月16日、IHIマリンユナイテッド横浜工場で2番艦「いせ」が竣工した。「ひゅうが」に比べ指揮通信能力や 補給能力が改良されている。なお、平成22年度予算案において「ひゅうが」型の 拡大改良型である19.500t型護衛艦の建造予算が認められIHIマリンユナイテッド呉工場で建造される。
| ひゅうが | DDH−181 平成16年度計画 IHIマリンユナイテッド横浜工場 平成21年3月18日竣工 |
|---|---|
| いせ | DDH−182 平成18年度計画 IHIマリンユナイテッド横浜工場 平成23年3月16日竣工 |
基準排水量 13.500t
満載排水量 18.000t
全長 197m
幅 33m
深さ ?
喫水 7m
主機/軸数 ガスタービン4基COGAG(搭載主機LM2500)/2軸
出力 100.000馬力
速力 30ノット
兵装
・垂直ミサイル発射装置Mk41VLS1基(16セル、発展型シー・スパロー対空ミサイル、垂直発射型アスロック兼用)、
20mmCIWS2基、324mm3連装短魚雷発射管2基
搭載機
・SH−60J/Kなど4機程度、必要に応じて11機以上搭載可能
乗員 346名、他に司令部要員25名