
(写真上)呉基地で撮影した「ひえい」
海上自衛隊では草創期より対潜空母の保有が検討されていたが諸般の事情により実現出来なかった。
昭和42年度からはじまる3次防でも空母が計画されたがこれも政治的判断で次期早々とされヘリコプター3機搭載型護衛艦2隻が建造される事となった。
これが海自初のDDH「はるな」型である。本クラスは有人ヘリコプターを搭載した初の海自護衛艦でもあり海自建艦史上に特筆されるべき存在であろう。
※「はるな」型はイタリア海軍の「アンドレア・ドリア」級やカナダ海軍の「サン・ローラン」級の影響を色濃く受けた
「はるな」型はイタリア海軍が1964年に竣工させたヘリコプター搭載巡洋艦「アンドレア・ドリア」や同時期にカナダ海軍がヘリコプター搭載艦に
改造していた駆逐艦「サン・ローラン」級の影響を強く受けた設計であった。イタリアやカナダが先手を付けたが対潜作戦の要としてヘリコプターを水上艦艇に搭載する
価値を多くの国が理解していた。
空母保有を断念した海上自衛隊がヘリコプター搭載護衛艦の建造を意図したのは世界の趨勢に照らし合わせても当然の成り行きであった。
HSS−2を3機搭載する「はるな」型は海自始まって以来の大型艦であり大きさから言えば帝國海軍の乙巡洋艦に相当する。。
「はるな」型は対潜を主任務としており前甲板には5インチ砲2基とアスロック発射機など主兵装が集中し、艦中央部には艦橋構造物が後部にはヘリコプター格納庫と
飛行甲板が設けられた。竣工時の本クラスは艦砲が前甲板のみの配置であったので艦尾方向へ砲口を向けられない事が防空上の問題点として指摘されていたが、
後のFRAM改造で短SAM発射機と20mmCIWSが搭載され是正される事となる。飛行甲板には荒天時におけるヘリコプター運用を向上させる為にカナダ
製着艦拘束装置ベア・トラップが装備されている。
なお、他国の水上戦闘艦艇が搭載するのは中型ヘリコプターであり「はるな」型の様にHSS−2クラスの大型対潜ヘリコプターを3機も搭載するのは他に例をみない。
対潜作戦に特化した日本独自の用兵思想と言えよう(カナダ海軍の「サン・ローラン」級はHSS−2系の機体を搭載したが搭載機数は
1機であった)。或いは日本以外では出現し得なかった艦艇、と言うべきであろうか・・・。
※FRAM改造の実施
「はるな」、「ひえい」の2隻は海自護衛艦として初めてとなるFRAM(艦隊近代化)改造が実施された。
艦齢の延長(24年→32年)、「しらね」型に準ずる能力を付与する為にシー・スパロー短SAM、20mmCIWSの搭載や情報処理能力の向上が行われた。
海自におけるFRAMは本クラス2隻と「たかつき」、「きくづき」の計4隻に実施されたが以後は行われていない。FRAMによる戦力アップは
間違いないところであるが費用効果の面でいろいろ難しい問題があるのかもしれない。
(写真左)「ひえい」の前甲板
2基の73式54口径5インチ単装速射砲、アスロック8連装発射機が見える。この配置は「しらね」型にも継承されている。
(写真左)「ひえい」の52番73式54口径5インチ単装速射砲
アメリカ海軍制式127mm速射砲Mk42を日本製鋼所でライセンス生産したもの。
(写真左)「ひえい」の艦橋構造物
同世代の「たかつき」型や「たちかぜ」型、第2世代DDH「しらね」型と類似した外観だ。

(写真左)ヘリコプター格納庫上に装備されているシー・スパロー短SAM8連装発射機V型
FRAM改造で装備されたもので、これにより「はるな」型の対空戦闘能力は飛躍的に向上した。なお、発射機V型は国産開発
(写真左)「ひえい」のヘリコプター格納庫
HSS−2/SH−60系の機体を3機格納出来る。
(写真上)除籍後、呉基地に係留中の「ひえい」
砲身は切断され20mm機関砲やシー・スパロー発射機も撤去されている。喫水も浅く除籍艦である事を実感させる。
| はるな | DDH−141 昭和43年度計画 三菱重工長崎造船所 昭和48年2月22日竣工 昭和61年3月〜62年10月三菱長崎にてFRAM改造 平成 21年3月18日除籍 |
|---|---|
| ひえい | DDH−142 昭和45年度計画 石川島播磨重工東京工場 昭和49年11月27日竣工 昭和62年8月〜平成元年3月石重播磨東京にてFRAM 改造 平成23年3月16日除籍 |
※要目はFRAM改造後の「ひえい」
基準排水量5.050t
満載排水量6.800t
全長153.0m
幅17.5m
深さ11m
喫水5.3m
遮浪甲板型
主機/軸数:蒸気タービン(搭載主機:石播2胴衝動式)/2軸
缶:石播FWD型
出力:70.000馬力
速力31ノット
兵装
・127mm単装砲2基、20mmCIWS2基、シー・スパロー対空ミサイル8連装発射機1基、アスロック8連装発射機1基、3連装短魚雷発射管2基
搭載機
・SH−60JK哨戒ヘリコプター3機
乗員370名