
米海軍がイージス・システムを搭載した主力水上戦闘艦艇として大量建造しているミサイル駆逐艦「アーレイ・バーク」級は段階的な能力向上が行われている。
2000年8月に竣工したDDG−79「オスカー・オースチン」以降は原型であるフライトT、情報処理能力を改善したフライトUに次ぐ3番目のタイプである
フライトUAと分類されている。
フライトUは7隻と少なく改良範囲も限定的でありフライトTのマイナーチャンジ型という性格であったがフライトUAは改良範囲が広範に及んで能力は大きく向上し
外観上も前2タイプに比べて変化が見られる。
※フライトUAの特徴
・ヘリコプター格納庫の設置
フライトUAの最大の特徴はヘリコプター格納庫を設置しヘリ2機の搭載能力を持つ事ことである。艦隊全体の運用効率を高める為にイージス艦にもミサイル警戒などを
担当する艦載ヘリコプターの運用能力が要求されたのであろう。後部VLSはヘリ格納庫内に装備されている。フライトUAは
日本の「あたご」型、韓国の「セジョン・デワン」級のタイプシップとなった。
・VLSのセル数の見直し
フライトT、フライトUでは垂直ミサイルVLSが90セルであったがフライトUAでは96セルと増強されている。VLSにはスタンダートSM2、トマホーク、
アスロックが搭載されているがミサイル防衛MD能力を有している艦ではSM−3が搭載されている。また、「アーレイ・バーク」級では防空力を高める為に
VLS8セルに個艦防御用の発展型シー・スパローESSMの搭載が進められている(1セルあたり4基搭載)。
・その他兵装の見直し
フライトUAではVLS以外でも兵装の見直しが行われている。艦砲はDDG−81「ウィンストン・S・チャーチル」(フライトUAとしては3番艦)からは
射程117kmの誘導砲弾を発射出来る127mm単装砲Mk45Mod4に換装されている。VLSセル数の増加に伴いハープーン発射筒は廃止されている
(必要に応じて搭載可能)、20mmCIWSはDDG−85「マッキャンベル」以降は搭載されていない。
・曳航式ソナーTASSの廃止
フライトUAでは曳航式ソナーTASSが廃止された。
(写真左)前甲板の様子
127mm単装砲は誘導砲弾を発射出来るMk45Mod4、砲盾はステルス性を高めた直線デザイン。砲の後ろに
前部VLS(32セル)が装備されている。
(写真左)艦橋構造物
側面にはフェーズド・アレイ・レーダーがSPY−1Dが装着されている。
「アーレイ・バーク」級はフォークランド紛争の戦訓などから艦橋構造物を鋼製とし抗甚性を高めている。
(写真左)後部煙突付近
フライトUAではヘリ格納庫内に後部垂直ミサイル発射装置VLS(64セル)が装備されている。
(写真左)「アーレイ・バーク」級ではイルミネーター用のSPG−62を3基装備しているがそのうち2番煙突後方に2基装備されている。
フライトUAでは20mmCIWSは搭載されていない艦が多いがこれはVLSに個艦防御用の発展型シー・スパローESSMの搭載が進んでいる為である。
(写真左)艦尾のヘリコプター発着甲板
ヘリ格納庫を設置したフライトUAでは移送用レールも装備されている。
「アーレイ・バーク」級の建造は継続しており当面、74隻程度が建造されると推測されている。ネームシップの「アーレイ・バーク」が1991年に竣工して 以来、段階的能力向上を行いつつ同一艦型が20年余りに渡って継続建造されている事は本クラスの基本設計が如何に優秀であったかを強く物語る。 第二次大戦以後に建造された全ての水上戦闘艦艇の中で最も成功したクラスと言えよう。米海軍では本クラスの後継艦として前衛的な新型ミサイル駆逐艦 「ズムウォルト」級の建造を進めてきたが大幅な建造費アップにより僅か3隻で建造が打ち切りになってしまった事を受けて「アーレイ・バーク」級の追加建造を 検討している。この場合、フライトUAを更に発展させたフライトVに移行する可能性が濃厚になっている模様。いずれにせよ、「アーレイ・バーク」級は今後 相当長期間に渡り米海軍の中核を担い続けるであろう。
(写真左)アメリカ海軍横須賀基地で撮影したDDG−89「マスティン」
第7艦隊所属で横須賀を母港にしており日本で馴染みの深い艦である。
(写真左)横須賀基地で撮影したDDG−85「マッキャンベル」(右)
横須賀配備艦
(フライトUA)
| オスカー・オースチン | DDG−79 2000年8月竣工 |
|---|---|
| ルーズヴェルト | DDG−80 2000年10月竣工 |
| ウィンストンS.チャーチル | DDG−81 2001年3月竣工 |
| ラッセン | DDG−82 2001年4月竣工 |
| ハワード | DDG−83 2001年10月竣工 |
| バルクリ | DDG−84 2001年12月竣工 |
| マッキャンベル | DDG−85 2002年8月竣工 |
| シャウプ | DDG−86 2002年6月 |
| メイスン | DDG−87 2003年4月竣工 |
| プレブル | DDG−88 2002年11月竣工 |
| マスティン | DDG−89 2003年7月竣工 |
| チャフニー | DDG−90 2003年9月竣工 |
| ピンクニイ | DDG−91 2004年5月竣工 |
| マンセン | DDG−92 2004年8月竣工 |
| チャンフーン | DDG−93 2004年9月竣工 |
| ニッツ | DDG−94 2005年3月竣工 |
| ジェームスE.ウィリアムス | DDG−95 2004年12月竣工 |
| ベインブリッジ | DDG−96 2005年11月竣工 |
| ハルゼー | DDG−97 2005年7月竣工 |
| フォレスト・シャーマン | DDG−98 2006年1月竣工 |
| ファラガット | DDG−99 2006年6月竣工 |
| キッド | DDG−100 2007年5月竣工 |
| グリッドレイ | DDG−101 2007年2月竣工 |
| サンプソン | DDG−102 2007年11月竣工 |
| トラクスタン | DDG−103 2009年4月竣工 |
| スタレット | DDG−104 2008年6月竣工 |
| デューイ | DDG−105 2010年3月竣工 |
| ストックデイル | DDG−106 2010年4月竣工 |
| グレイブリイ | DDG−107 2010年竣工予定 |
| ウエインE.メイヤー | DDG−108 2009年10月竣工 |
| ジェイソン・ダンハム | DDG−109 2010年竣工予定 |
| ウィリアムP.ローレンス | DDG−110 2011年竣工予定 |
| スプルーアンス | DDG−111 2011年竣工予定 |
| マイケル・マーフィー | DDG−112 2014年竣工予定 |
| ウィリアム・M・シムス | DDG−113 発注済み 2014年竣工予定 |
| キャラハン | DDG−114 発注済み |
| スコット | DDG−115 発注済み |
| チャンドラー | DDG−116 発注済み |
満載排水量9.155t
全長155.3m
幅20.3m
喫水6.7m(ソナー部9.8m)
主機/軸数:ガスタービン4基COGAG/2軸
出力:100.000馬力
速力31ノット
兵装
・垂直ミサイル発射装置VLS2基(96セル)、127mm単装砲1基、324mm3連装短魚雷発射管2基、20mmCIWS2基(一部の艦のみ)
搭載機
・SH−60B 2機
乗員366名