
海上自衛隊最期の在来型DDG「はたかぜ」型
旗風 島風
「あまつかぜ」、「たちかぜ」型に次ぐ海上自衛隊第三世代の対空ミサイル搭載護衛艦DDGとして建造されたのが「はたかぜ」型である。
「はたかぜ」型は対空ミサイルSAM発射機1基とイルミネーター用レーダー2基を搭載する在来型護衛艦であるが前2クラスが
アメリカ海軍のミサイル搭載駆逐艦「チャールズF.アダムス」級に習いSAM発射機を後甲板に装備していたのに対して本クラスは
前方からの脅威に対抗する為とヘリコプターによる輸送ヴァートレップの効率を高める為に後甲板にヘリ発着スペースを設けた事により
SAM発射機を前甲板に装備した事が大きな特徴である。このような独特な配置は他国にも例が少なく「はたかぜ」型は和風デザインの艦艇となった。
その他、前甲板に51番5インチ砲とアスロック発射機、後甲板に52番5インチ砲を装備する配置は「たちかぜ」型のそれを継承している。
「はたかぜ」型が装備している戦術情報処理システムは「たちかぜ」型3番艦「さわかぜ」が装備しているのと同じものでCDSとも
言われる戦闘指揮システムOYQ−4である。これはアメリカ海軍が開発したNTDS(艦船情報処理システム)をベースに日本独自の
運用構想を盛り込んで開発され艦の頭脳とも言うべき存在である。OYQ−4で得られた情報を他の艦艇や航空機とやり取りする
データリンク装置としてリンク11、14が装備されており「はたかぜ」型は完全なシステム艦となっている。
(写真左)艦首上空より見た「はたかぜ」
イージス艦の出現でやや陰が薄くなった感がある「はたかぜ」型であるが依然として有力な戦力である。垂直で構成されたアイランド構造物や
ラティスマストなどステルス性が本格的に導入される以前の設計である事を物語る。
(写真左)レーダーや電子戦装置は「たちかぜ」型と基本的に同型のものを装備している
・対水上レーダー OPS−28
・対空レーダー OPS−11
・3次元レーダー SPS−52
・「スタンダート」用イルミネーター SPG−51C
前甲板には対空ミサイル「スタンダート」用単装発射機Mk13、51番5インチ砲、アスロック8連装発射機が装備されている
※「はたかぜ」型が搭載するミサイル
「はたかぜ」型が搭載する対空ミサイルは「たちかぜ」型と同じく米海軍制式の「スタンダート」SM−1MRで誘導方式は セミ・アクティブ・レーダーホーミングを採用し射程は約18km、速度は1マッハ以上。本艦型は40発を搭載する。対艦ミサイルはハープーンで専用の 4連装発射筒を2基搭載している。「さわかぜ」はSAM発射機Mk13がスタンダート、ハープーン兼用であったが本クラスは別個の発射機となり 運用上の融通性が向上している。
※主機/推進方式はCOGAG方式のガスタービンを採用
「はたかぜ」型は海自DDGとしては初のオール・ガスタービン艦でもある。
同じオール・ガスタービン護衛艦である「はつゆき」型では高速用オリンパスTM32Bと巡航用タリンRM1Cを搭載し高速時と
巡航時に主機を使い分けるCOGOGによる推進方式が採用されたが本クラスでは高速用TM32Bと巡航用スペイSM1Aの2機種
を併用するCOGAGが採用されている。
スペイSM1Aは巡航用ではあるが出力は高速用TM32Bと大差なく主機の併用によるメリットは大きい。「はたかぜ」以後の海自
DD型護衛艦の推進プラントはCOGAG方式が主流になって来ている。
(写真左)「はたかぜ」艦首
「はたかぜ」型は前甲板にスタンダート用単装発射機Mk13を装備しているので波浪から発射機を守る為に顕著なナックルラインと大型ブルワーク
が設定されている。この配置は独特なもので他国でもあまり例がない。
(写真左)「はたかぜ」の艦中央部付近
他のガスタービン搭載艦と同じく「はたかぜ」型の煙突も非常に太く外観上の大きな特徴である。
艦橋構造物後方にはガスタービン用吸気口、煙突後方にはハープーン対艦ミサイル発射筒架台や内火艇用ボートダビットが見える。
後部マストトップには対空レーダOPS−11が装備されている。
(写真左)後甲板のヘリ発着スペース直前には52番5インチ砲が搭載されている。
52番砲の前の構造物上には5インチ砲用の射撃指揮装置FCS−2型21、その両側付近には20mmCIWSが装備されている。
後部構造物に描かれている2本の白線はヘリ発着艦時の目印。
「はたかぜ」型はヘリコプターによる空輸ヴァートレップを重視しているがヘリ格納庫は有していない。
2番艦「しまかぜ」は「はたかぜ」より建造予算が増額されており装備が充実している。
「はたかぜ」型は在来型DDGとしては高い完成度を誇っており計4隻の建造が予定されていた。
しかし、1980年代後半はイージス艦の導入が具体化されていた時期でもあり在来型DDGの継続建造は見送られ実際に建造
されたのは「はたかぜ」、「しまかぜ」の2隻に留まっている。
| はたかぜ | DDG−171 昭和56年度計画 三菱重工長崎造船所 昭和61年3月27日竣工 |
|---|---|
| しまかぜ | DDG−172 昭和58年度計画 三菱重工長崎造船所 昭和63年3月23日竣工 |
基準排水量
・「はたかぜ」4.600t
・「しまかぜ」4.650t
満載排水量
・「はたかぜ」5.900t
・「しまかぜ」5.950t
全長 150.0m
幅 16.4m
深さ 9.8m
喫水 4.8m
遮浪甲板型
主機/軸数 ガスタービン4基COGAG(搭載主機:高速用オリンパスTM3B、巡航用スペイSM3A)/2軸
出力 72.000馬力
速力 30ノット
兵装
・スタンダートMR対空ミサイル発射機1基、ハープーン対艦ミサイル4連装発射筒、5インチ砲2基、近接防御兵器20mmCIWS2基、
アスロック8連装発射機、3連装短魚雷発射管2基
乗員 260名
海鷲の末裔