90式戦車@
TYPE90 TANK No.1

(写真上)第71戦車連隊の90式戦車

120mm滑腔砲と複合装甲を採用した90式戦車

90式戦車は61式戦車、74式戦車に次いで国産開発された戦後第三世代の戦車である。
74式戦車が制式化された直後から新戦車の模索は始まっていた。70年代前半にはソ連では125mm砲を搭載したT64、T72の 配備を開始しており100mm砲搭載のT55の撃破を目標とした74式ではこれらソ連新型戦車に対抗するには不十分である事は 明白な情勢であった。新戦車はソ連新世代戦車に対抗する為に当初計画の段階において120mm砲、新装甲、1.500馬力級 エンジンの搭載が要求されていたと推測される。また、61式や74式は日本全土への配備が想定されていた為に重量にもかなりの 制約があったが新戦車は北海道専用という構想で設計され74式の38tを大きく上回る50t級という日本戦車史上他に例がない重量級戦車として 開発される事になった。 50tという重量が選択されたもう一つの事由は120mm砲の発射の衝撃を吸収するには50tという重量が最低限必要であったから だとも言われている。
昭和52年度(1977年度)から部分試作が開始された。民間側の主契約者は三菱重工、車体・エンジンは三菱重工、主砲は 日本製鋼所、射撃統制装置FCSは三菱電機の担当となった。昭和57年度からは第一次全体試作、昭和61年度からは第二次全体試作が行われ平成元年度 までに評価試験を完了し平成2年度に90式戦車として制式化された。

(写真右)第1機甲教育隊の90式戦車
砲安定装置により車体が移動中でも砲身は目標を捉え続ける事が可能。

※90式戦車の主な特徴

@120mm戦車砲
A複合装甲
B1.500馬力水冷ディーゼル・エンジン
C油圧式とトーションバー・スプリング式を併用したハイブリット・サスペンション
C自動装填装置

120mm戦車砲は当初、国産開発が予定されていた。実際に試作砲も製作され試験も行われたが最終的にはドイツ・ラインメタル社製の 44口径滑腔砲が採用された。この砲は西独軍の「レオパルドU」や米軍のM1「エイブラムス」にも搭載されているNATO軍標準 戦車砲とも言える存在である。往来のライフリングによる回転で砲弾の弾道線の安定を狙う施条砲(ライフル砲)では発射ガスが漏れ エネルギーが低下する問題があり今日の戦車砲は砲身内が平滑でガス漏れが少ない滑腔砲が主流となっている。滑腔砲は小型の安定翼で 弾道線の安定を図る翼安定弾を使用する。滑腔砲は発射時の摩擦も少ないので砲身命数(寿命)が長く旋条砲のL7の約200発に 対して約900発とも言われる。
90式戦車では74式戦車で不採用となった自動装填装置が採用されている。第三世代戦車では「レオパルドU」やM1「エイブラムス」 などは往来と同じく装填手を置き自動装填装置を採用していない。自動装填装置を採用しているのは90式以外には旧ソ連・ロシアの T64以降のタイプ、フランスの「ルクレール」など第三世代としては比較的軽量型に属する戦車である。自動装填装置の採用にマイナス 的な評価としてはマン・パワーの低下を挙げるものがある。装填手が不要となった為に乗員が4名から3名に減少したが、逆に一人当たり の作業量増大、死傷による戦力低下などのデメリットが指摘される。一方で砲塔の小型化による被弾面積の圧縮や車体重量の軽量化など のメリットを評価する声もある。

90式戦車が使用する戦車砲弾

90式戦車が使用する砲弾は対戦車専用のAPFSDS(120mmTKG装弾筒付安定翼徹甲弾)と多目的用の HEAT−MP(120mmTKG対戦車榴弾)の2種

(写真左)陸自広報センターに展示されているAPFSDS(下)とHEAT−MP(上)のダミー

90式戦車の各部写真

(写真上左)戦車教導隊第2中隊の90式戦車
120mm滑腔砲は日本製鋼所でライセンス生産されている。 90式の弾薬は送弾筒付翼安定徹甲弾APFSDS−T、対戦車多用途弾HEAT−MPの2種である。他に訓練弾があるが空砲用の 弾薬はない。
砲口向かって右側に装着されているのは砲口照準ミラー。砲盾下部と車体の間に隙間があり防御上の問題点であるが、これは90式に 限った事ではなく第三世代の戦車に共通した傾向である。 120mm滑空砲と並ぶ90式戦車の特徴が複合装甲の採用である。
90式の複合装甲は国産開発されたものでセラミック素材を中核としたものと言われている。複合装甲は砲塔前面及び車体前面に使用 されその他の部分は均質圧延鋼板を中空装甲にしたものを使用しているらしい。

(写真左)第72戦車連隊の90式戦車
砲塔上部左舷側に見える箱型は砲手用照準器。これには熱戦映像装置が組み込まれているが細評は不明

(写真上右)砲塔側面に装着された4連装発煙弾発射装置と予備キャタピラ。

  (写真左)後方から見た72戦連の90式戦車
トップ・アタック対策で上部開口部を極力減らしたのでラジエーター・グリルは車体後部にある。已むを得ない措置だが防御上の泣き所でもある。

90式戦車のサスペンションは74式戦車のオール・油圧式とは異なり油圧式とトーションバー・スプリング式のハイブリット式と なっている。転輪は片側6個で前1,2輪と後5,6輪が油圧式、中3,4輪がトーションバー式である。姿勢制御は74式より簡略化 されており車高の上下変換と前後姿勢変換は可能であるが左右変換は出来ない。74式戦車の油圧式サスペンションは贅沢すぎる、という 批判があったが90式はより実戦的設計を重視したと言える。
90式のエンジンは三菱2サイクル水冷10気筒ディーゼルで出力は1.500psに達している。日本の戦車は伝統的に空冷ディーゼル を採用してきたが74式の720psあたりが限界であり90式では必然的に水冷エンジンとなった。エンジン上面はトップ・アタック に対応する為に極力開口部を減らす必要がありラジエーター・グリルは車体後部に設定されている。

約340両をもって調達終了、他国の様に近代化されておらず戦力価値は相対的に低下していると認めざるを得ない

既に後継となる10式戦車が制式化されており90式戦車は約340両ほどの生産数を持って調達を終了した。 当初から北海道専用として開発された為に北部方面隊以外では富士学校などの教育機関に配備されるに留まった。調達数については 米ソ冷戦の終結による防衛力整備の在り方が大きく変わった事も一つ要因である。それまでの対ソ戦を想定した北海道重視戦略 から中国や北朝鮮との軍事的緊張を睨んでの九州・南西諸島など西方重視戦略への転換は重量級の90式の整備には不利な材料 となった。
ところで90式は制式化から20年あまりを経過したが他の陸自兵器と同じく大きな改良は行われていない。「レオパルドU」やM1 「エイブラムス」が大規模な改良を行い更に性能を向上させている事と比べても対照的である。90式戦車は北海道以外でも運用上、 特に問題は生じないとの声もある。アメリカやドイツですら現行戦車の改良で戦車戦力の向上を目指している事を考慮すれば、 日本においても新戦車の新規開発ではなく90式戦車の近代化・性能向上という選択肢もあったのでは、と思えるのだが ・・・、今後は火力や防御力などの改良が実施されるのかどうかが注目される。

戦車教導隊の90式戦車

全備重量 50,0t
全長 9755mm
全幅 3430mm(スカート含む)
全高 2335mm(砲塔上面)
底部地上高 450mm(+150〜−255mm)
エンジン 2サイクル10気筒水冷ディーゼル(型式名称:三菱10ZG32)
出力 1.500sp/2.400rpm
最高速度 70km/h
行動距離 約300km
武装
・120mm戦車砲×1
・12.7mm重機関銃×1
・7,62mm車載機関銃×1
乗員 3名

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1/35 陸上自衛隊90式戦車 富士教導団戦車教導隊第5中隊 完成品