THE ハプスブルク 国立新美術館開催  2009年9月25日(金)〜12月14日(月)

 

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「戦争は他家に任せておけ。幸いなオーストリアよ、汝は結婚せよ」

ハプスブルク家に伝わる有名な家訓である。

この言葉通りに、名門一族と政略結婚を繰り返し、欧州世界に君臨したハプスブルク家。

長い年月に渡って、強大な勢力を誇ったこの一族は、欧州最大の名門王家として繁栄を極めた。

その一族のコレクションが、日本において公開されることになった。

一族の歴代の王の肖像画はもちろんのこと、その家宝も展示されるという。

これはきっと素晴らしいお宝があるに違いない、と期待に胸を膨らませたわしは、天高い秋半ば、国立新美術館へと足を向けた。

 

展覧会は全7章で構成されていた。

コレクション総展示数は116点である。

 

機.魯廛好屮襯家の肖像

供.ぅ織螢絵画

掘.疋ぅ蝶┣

検‘段冥佗福 殘声E傾弔ら皇帝フランツ・ヨーゼフ1世に贈られた画帖と蒔絵棚−

后々芸と武具

此.好撻ぅ鶻┣

察.侫薀鵐疋襦Εランダ絵画

 

展覧会冒頭を飾るのは、歴代のハプスブルグ家の著名な人物たちの肖像画である。

一番最初に飾られていたのは、ハンス・フォン・アーヘンの描いた「神聖ローマ皇帝ルドルフ2世」の肖像画であった。

ルドルフ2世は、ハプスブルク家のコレクションの基礎を築きあげた人物である。

茄子のような顔形、突き出た下唇。ハプスブルク家の容貌の特色がよく表れている。

いかにもこの家の当主!というような風体だ。

彼の画を含めて、この章には8枚の肖像画が展示がされていた。

 

”神聖ローマ皇帝ルドルフ2世”

1600-03年頃制作

 

ハンス・フォン・アーヘン

 

本展覧会の目玉作品でもある「11歳のマリア・テレジア」「オーストリア皇后エリザベート」もこの章で展示されていた。

マリア・テレジアはハプスブルク家の歴代の君主の中でも、ずば抜けた政治の才能を持った女帝であった。

この肖像画は、まだ彼女が少女だった頃、女帝になる前に描かれた画である。

楚々とした雰囲気を漂わせてはいるものの、知的なまなざし、凛とした佇まいは、すでに女王としての風格が見受けられる。

 

エリザベートはオーストリア最後の皇后である。

絶世の美女として名高かった彼女であるが、最後はアナーキストに暗殺されて異国の地で亡くなった。

この肖像画はそのエリザベートの美貌をくまなく描いた名作としてよく知られている。

彼女の姿を見たさに各国から多くの人がウィーンにやってきたといわれているが、この肖像画を見ればそれも納得だ。

素晴らしく美しい、というよりは愛らしい女性である。

 

 

11歳のマリア・テレジア

1727年頃制作

 

アンドレアス・メラー

 

オーストリア皇后エリザベート

1865年頃制作

 

フランツ・クサファー・ヴィンターハルター

 

 

蕎呂魯ぅ織螢絵画の展示である。

16世紀〜18世紀までに描かれた作品が、全部で27点展示されていた。

ラファエロジョルジョーネティツアーノティントレットといった有名な画家の作品が並ぶ。

描かれた時代に反映して、宗教的な聖書に即した作品が多かった。

 

印象深かったのはベルナルディーノ・ルイーニの「聖母子と聖エリサベツ、幼い洗礼者ヨハネ」という作品だ。

子供を抱く聖母の衣服の色が美しい。

またロレンツォ・ロット「聖母子と聖カタリナ、聖トマス」という作品にも心惹かれた。

これも聖母子を描いた画であるが、やはり聖母の纏っている衣服が美しいと思った。

 

ジョルジョーネ「矢を持った少年」も不思議なインパクトがあった。

タイトル通り、矢を片手に持った少年が描かれている図でる。背景には何も描かれていない。

見ているこちらと対峙する少年の瞳がもの憂げなのが印象的だ。

 

矢を持った少年

1505年頃制作

 

ジョルジョーネ

 

バッティステッロ「オリーブ山のキリスト」も強烈な作品だった。

有翼の天使の前でキリストが跪いている図が描かれた作品である。

暗い色調が、ずっしりとし重厚感をかもし出している。

 

 

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作品の展示は9点と他の章に比べると少ない。

その中で心に残ったのは、ルーカス・クラナッハ(父)「洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ」という作品である。

サロメは旧約聖書に登場する人物の一人で、彼女に関する逸話は有名で知らない人間はいまい。

王の御前で見事な踊りを披露し、その褒章としてヨハネの首を所望した、あの妖婦である。

ルーカスの描いたサロメ画は、ヨハネの首を盆に乗せて持って佇んでいる図である。

その妖しげな表情を見よ!恐ろしいくらい妖艶な目つきをしているではないか!

彼女の手にしているヨハネの首にもぞっとする。

切り取られた首の箇所の部分がなまなましい。

実に陰惨で恐ろしく、そして美しい絵である

 

洗礼者聖ヨハネの首を持つサロメ

1535年頃制作

 

ルーカス・クラナッハ(父)

 

 

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何故特別なのかというと、日本がオーストリア皇帝に贈ったコレクションだからである。

そのコレクションは画帖と蒔絵棚であった。

今回の展覧会に際し、140年ぶりの日本の帰国とのことである。

 

画帖の総頁数はなんと98頁。

どの頁も日本の風景や風俗画が実に美しい線描写と色彩で描かれている。

その作者はなんと狩野永悳や歌川広重など、日本を代表する浮世絵師らなのである。

 

蒔絵棚も素晴らしい。

黒い漆を塗った棚に日本の山水図が金箔で施されている。

その金と黒のコントラストがえもいわれず美しい

見事な日本美の集大成である。

 

江呂蝋芸と武具のコレクションの展示である。

武具類4点、胸像6点、美術工芸品26点という内訳だ。

どの工芸品も極め細やかに意匠を凝らした作品ばかりだった。

特に「皇帝カール5世のメデューサの盾」の緻密な精巧には舌を巻いた。

 

フランツ・デ・ハミルトン作の象嵌細工が目を惹いた。

皇帝と皇妃を象った細工物なのであるが、それが法隆寺の玉虫厨子を連想したからである。

黒色の中に光る真珠色が美しい、と思った。

 

その他食卓に置く盛り付け皿や鉢などの食器類がガラスケースの中に飾られていた。

どれも斬新なデザインかつ高価そうなものばかりだ。

豪華な王家の食卓が頭の中に浮かび上がってきた

 

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10作品ほどの展示である。

スペインの巨匠といえばやはりエル・グレコ。彼の作品は1点展示されていた。

他に有名な画家としてはベラスケス、そしてムリーリョの作品があった。

 

ベラスケスの作品は3点展示されており、そのうちの2点は本展覧会の目玉作品にも掲げられている。

「白衣の王女マルガリータ」「皇太子フェリペ・プロスペロ」である。

どちらも子供時代の愛らしい姿を描いた画だ。

が、ベラスケス独自の手法で、近くからみると輪郭がぼやけてよくわからない。

少し離れた場所から見ると、実際に本物がそこに立っているように見えるのである。さすがは巨匠。

皇太子は一見すると男子に見えないような格好をしている。

少女用のドレスを纏い、体にいくつかの鈴をつけているからである。

これは早世から逃れるための厄除けなのだとか。

が、こうした努力にも関わらず、この皇太子はわずか4歳で亡くなってしまうのである。

マルガリータ王女にいたっては14歳でスペイン王家に嫁ぐが、やはり22歳という若さでこの世から去ってしまう。

忌まわしい血の因縁が感じられる・・・

 

 

白衣の王女マルガリータ

1656年頃制作

 

ディエゴ・ベラスケス

 

皇太子フェリペ・プロスペロ

1659年制作

 

ディエゴ・ベラスケス

 

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ「悪魔を奈落に突き落とす大天使ミカエル」も良かった。

本作品はわしが本展覧会の中で最も気に入った作品である。

翼を広げた最高位天使ミカエルが炎の剣を振り上げて、悪魔を薙ぎ払っている図が描かれた作品である。

有翼の天使が描かれた図は他にも幾枚かあったが、どれも神の教えを諭す宗教色の強い作品ばかりだった。

が、本作品は、聖書に即していながらも、他作品にはない力強さがある。ほれぼれするほどカッコいい

 

悪魔を奈落に突き落とす大天使ミカエル

1665-68年頃制作

 

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ

 

 

またゴヤの作品も一点あった。

「カバリェーロ候ホセ・アントニオの肖像」という作品である。

シニカルな表情を称えた男の肖像画で、いかにも彼らしい作風だ。

 

カバリェーロ候ホセ・アントニオの肖像

1807年頃制作

 

フランシスコ・デ・ゴヤ

 

 

最終章讃呂魯侫薀鵐疋襦Εランダ絵画の作品の展示である。

さすがにフェルメールの作品はなかったが、ブリューゲルルーベンス、そしてレンブラントの作品があった。

この章の展示数は21点。全体的に暗い色調の作品が多かった。

 

その中でバルトロメウス・スプランゲル「ヘルマフロディトスとニンフのサルマキス」という作品が印象に残った。

オウィディウスの「変身物語」を主題にした画である。

若者ヘルマフロディトスに恋をしたニンフが彼と一体化するために、服を脱いでいる場面を描かれている。官能的な作品だ。

同じ画家の描いた「ケレスとバッコスがいないとヴィーナスは凍える」という作品もかなりエロティックである。

バッコスとケレスが裸体に近い格好で寄り添いながら屹立している画が描かれている。

二人とも色気のある表情をしている。

 

 

ヘルマフロディトスとニンフのサルマキス

1580-82頃制作

 

バルトロメウス・スプランゲ

 

”ケレスとバッコスがいないとヴィーナスは凍える”

1590-95年頃制作

 

バルトロメウス・スプランゲ

 

巨匠レンブラントの作品「読書する画家の息子ティトウス・ファン・レイン」にもまた目を奪われた。

暗い色調で統一されているのにも関わらず(だからか?)、ものすごい存在感がある。

 

読書する画家の息子ティトウス・ファン・レイン

1665年頃制作

 

レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン

 

サロモン・ファン・ライスダール「渡し舟のある川の風景」も良かった。

清々しい遠近感を持った風景画である。

本展覧会においては、風景画がほとんどなかったので、余計に新鮮に感じられた。

 

以上、欧州名門一族ハプスブルク家の家宝を約2時間かけて見て廻った。

どれもみな素晴らしい作品たちだった。

が、これはほんの一部なのだ。

一家のお宝はここに展示された以外にもたくさんあるハズ・・・。見たいなあ。

ああ、わしもお金持ちになってたくさんの美術品を購入して、多くの人に見せびらかしたいよ・・・。

 


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