「すみれのブーケをつけたベルト・モリゾの肖像

エドゥアール・マネ

1872年制作 オルセー美術館所蔵

 

 

 

 

画面の中から挑みかかるような眼差しをこちらに向けている一人の女性がいます。

女性は上半身のみの姿で存在しており、頭には大きな黒いシルクハットを被って、全身をそれと同色の衣服で覆っています。

胸元に紫色がほのかに見えますが、それはすみれのブーケです。

女性の背景は何も描かれておらず、ただ淡いグレー色が塗りこめられているだけです。

実に平面的で単調的な肖像画ですが、見る人全てを圧倒してしまうようなもの凄い存在感があります。

背景のその塗りこまれているグレー色は、まるでその女性の内面から噴き出ている熱情の炎のようです。

実に情熱的で魅力的な女性です。一体彼女は何者なのでしょうか。

実は、彼女は印象派の女流画家、ベルト・モリゾなのです。

ベルト・モリゾは卓越した才能と美しい容姿を持った画家でした。

当時においては珍しく自らの地位を確立した女流画家であり、また優れた人格の持ち主であったと言われています。

多くの画家が彼女の気を引こうとしたため、彼女は画壇から「運命の女」とまで称されました。

マネもその彼女の虜になった一人です。彼は彼女をモデルにした作品を何枚か描きました。

この作品はそのうちの一枚であり、マネの肖像画作品の代表作ともなっています。

ベルトは自身が優れた画家であっただけでなく、マネの芸術性を刺激したミューズでもあったのです。

ベルトをマネに紹介した画家のファンタン・ラトゥールは彼女のことをこう語っています。

「モリゾ家の令嬢たちは魅力的であると私も思います。彼女たちが男性でないのが悔やまれます」

 

 


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